専門職社会人音楽家が音楽について書いています。

新緑と桜 別願寺

散りそうな桜と新緑。
別願寺は時宗の小さなお寺。バス通り沿いで、家までの帰り道にいつも一休みするところ。
民家のようで通り過ぎてしまいそうなお寺ですが、代々の鎌倉公方菩提寺であった由緒正しいお寺です。
初夏の藤も見事です。
あまりお手入れされている様子はないんだけど。。
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利休梅

通り道
大巧寺の利休梅
普通ならば、爽やかな春、の光景です。
さすがに観光客は見かけなかった。
昨日は雪だったせいもありますが、先週の混雑はキケンだと思ったから、少し安心しました。
通勤もいつもの半分ぐらい。
ご商売の方は大変だろうと思います。
せめて地産地消で、地元でお金を使おうと思っています。

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アンドラーシュ・シフ ピアノ リサイタル

シフ卿の日本公演、19日のタケミツメモリアルが最終日でした。
【プログラム】
シューマン: 精霊の主題による変奏曲 WoO24
ブラームス: 3つの間奏曲 op.117
モーツァルト: ロンド イ短調 K.511
ブラームス: 6つのピアノ小品 op.118
***
J.S.バッハ平均律クラヴィーア曲集第1巻から
       プレリュードとフーガ第24番 ロ短調 BWV869
ブラームス: 4つのピアノ小品 op.119
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a「告別」
【アンコール】
J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲 BWV988から アリア
モーツァルト: ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 K.545から 第1楽章
ブラームス: アルバムの小品
シューマン: アラベスク op.18
シューマン: 「子供のためのアルバム」op.68から 楽しき農夫
シューベルト: 即興曲 変ト長調 D899-3

ペーター・シュライアー、ピーター・ゼルキン
天に召された二人の偉大な芸術家に捧げる演奏とのこと、冒頭にはシフのメッセージもあり、内容はたしかに告別だったのだと思います。
疫病の犠牲になった多数の人々、そして戦い続ける人類への祈りであったようにも思います。

チケットのもぎりなし、プログラム配布なし。
事務所のほうもいろいろ苦労されたでしょう。
本当に素晴らしい時間をありがとうございました。
聴けなかった方々へ、動画配信があります。
http://youtu.be/28ClBXDR-P0
物販もなかった。
最近出た本です。数冊持参していた出版社の担当から直接購入。
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元気もらったし、せっかく閉じこもっているんだから、ピアノ練習しよう。

ピアノの弾き方@奏法論

「先生は○○門下ですね。」
医学界において、これは結構なキーワード。○○門下とか、△△大◆◆内科、などというと、大体の腕が類推できるらしいし、考え方の基本的なところは透けて見える。
ピアノはどうだろうか。やっぱり、流派によって、弾き方がかなり異なる。
同じように、「○◇門下」は時々独り歩きする。
弾き方について考えてみよう。
椅子の高さ、鍵盤との距離、腕の位置、指の形、鍵盤のタッチなどなど、きりがないが、ある程度の傾向がある。
ざっと分けると、椅子の高さかなと思っている。
低い椅子でどっしりと構えるか、高い椅子で見下ろすように構えるか。
低い位置で弾くと、腕の重みが鍵盤にしっかりとかかりやすい。打鍵を深くして重厚な音を狙うならこちらがよいだろう。
高い位置で弾くと、指と手のひらで体重を支えて、打鍵をコントロールすることになる。浅い打鍵で中間色のような色彩を出すならこちらが有利かもしれない。
高い座り位置から、低音成分の倍音を十分に含ませた重厚な音を出すのは簡単ではなく、かなり訓練が必要かもしれない。

その昔、日本のピアノの生徒は「ハイフィンガー法」と呼ばれる弾き方を習いました。
「卵のかたち」に手を保ち、指先は垂直に鍵盤に向かう、というものでした。
時代が流れて、何人もの有名な日本人ピアニストさんたちが、世界に通用せずに苦労をされて、いろいろと演奏法や指導法を学ばれたその結果、ハイフィンガーの呪縛からピアノの生徒が解き放たれたといわれております。
代わりによく聞く奏法は、「重力奏法」であります。
ロシア奏法とか、指歩き奏法とかと言われるものも、たいがいは「重力奏法」のなかまです。
体重を腕から指先へ、そして鍵盤からハンマーへ、自在に伝えるための効率的な弾き方を考えると、肘から末梢側は曲がっていないほうが良いでしょう。
そして、指の第三関節(付け根の関節)で体重を支え、細かい動きはローリングや、重心移動で行うことになり、指そのものの速い動きは重要性が少なくなってくるらしい。

さて、わたくし、自分の奏法を眺めてみると
いろんなものを混ぜているなと思います。
古典的なものを弾く時は、それこそ生卵でテーブルをたたいているような感じが欲しくて、ハイフィンガー的です。
同じ古典の楽曲のなかでも、ちょっと色気を出したいなというときに、重力奏法的に弾き方が変わっている様子です。
ロマン派以降になると、ハイフィンガー的な弾き方では弾ききれない部分が多いので、文字通り手の内で転がしているような感じになっている様子です。
腰の立て方、背中の角度を調整して、見下ろすか、深い打鍵をするか、を調整しているようです。

その弾き方はダメ、とか、○○奏法が絶対いい、とか、それはどうなんでしょうかね。
奏でたい音楽に、出したい音色に、ちょうどよいものを自分の引き出しの中から出せたら、それがいいんじゃないかなと思っています。
ハイフィンガー、わたしは否定しません。

人間性豊かな指導者に恵まれても、検査至上主義から抜け出せなかったり、戦いましょうと言い続けたりする医者もいる。
経歴は素晴らしいのに、全く尊敬できない種類の人もいる。
しかしながら、どんな環境で育ってきても、切れがよくてセンスがいい、ときに人の気持ちがわかる医者が確かにいるわけですから、自分の音楽を探し続ける旅はきっと無駄ではありません。

アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル

コンサートが中止になってばかりで、息が詰まりそう。
シフ卿はやる気満々で、開催になりました。
2020年3月12日(金) 東京オペラシティ コンサートホール

プログラム
メンデルスゾーン: 幻想曲 嬰ヘ短調 op.28「スコットランドソナタ
ベートーヴェンピアノソナタ第24番 嬰ヘ長調 op.78「テレーゼ」
ブラームス: 8つのピアノ小品 op.76
       7つの幻想曲集 op.116
J.S.バッハ: イギリス組曲第6番 ニ短調 BWV811

アンコール
J.S.バッハ: イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 op.26「葬送」から 第1楽章
メンデルスゾーン: 無言歌第1集 op.19bから 「甘い思い出」
          無言歌集第6巻 op.67から 「紡ぎ歌」
ブラームスインテルメッツォ イ長調 op.118-2
シューベルトハンガリー風のメロディ D817

アンコールがいつものようにすごかった。
プログラムは後半が良かった。イギリス組曲がやはり素晴らしかった。
今回、数カ所のリサイタルが中止になって、彼も残念だったでしょう。
会場に空席も目立ちましたが、そして多少せき込む方もいましたが特に暴動もなく(苦笑)
皆が上質な音楽に飢えていたことを知りました。

桜も咲きますね。
感染症との戦いは、地上の生命すべての課題なんだし、人類は勝ったことなどないのだから
謙虚に行きたいものです。
問われているのは、各自の品位とモラル、怖いのはウイルスなんかじゃなくて、人間の闇なんだから。

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