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2020ピティナ・ピアノコンペティション特級

2020年は特別な年。
コンクールの舞台がライブ配信されるというあたらしい時代になりました。
思えば、2020年になってから、コンクールは中止や延期を余儀なくされました。
ショパン・コンクールは1年延期になりました。
エリザベート王妃国際コンクールのピアノ部門も1年延期になりました。
若い音楽家にとって、1年は大きい。
遠くに行けず、公開演奏の機会が限られ、聴衆の反応が得られない。
しかし、おうちにいるしかないからこそ、深められるものが必ずあるはずです。
ピティナのコンクールは、動画審査、演奏ライブ配信を一般に公開してくれました。
これは楽しい。
一次審査の動画には様々な環境が映し出され、それぞれの置かれた状況で懸命に努力していることが大いに伝わりました。
二次は、たいがいのコンクールで一番面白い予選ですが、長丁場ながら、デスクワークのおともに楽しませていただきました。
ライブでは聞けない時間帯もたくさんありました。アーカイブありがたかったです。
三次のコンチェルト抜粋を二台ピアノで、というのは伴奏側として大いに参考になりました。
セミファイナルでは、より繊細に選ばれた曲が各自の個性を際立たせて、多種多様で楽しかった。
本選のコンチェルト、ラフマニノフの3番を3人が弾くという重厚な時間。
誰が勝ってもよい、ようなファイナリストたちでした。皆さん素晴らしかった。
グランプリの尾城さんは、的確なテクニックの方、オケや指揮者と非常によくコンタクトをとり、ご自分の持ち味である丁寧で繊細で暖かな音楽を存分にきかせてくれました。
バルトークエチュードでもそうでしたが、音楽的に作り上げる、歌い上げる、リズムの自然さ、を大切にされています。
ラフマニノフは、この演奏を喜んだに違いありません。文句なしのグランプリだと思います。
山縣さんのショパンは、ラフマづくしの中で一服の清涼剤。非常に心地よく、安定感があり、細かいところまで丁寧に弾かれており、素晴らしかった。
来年のショパンコンクールも楽しみにさせていただきましょう。
このお二人のような演奏が、コンクールとしても評価されるというのはうれしいことです。
谷さんは、高校生ということです。トップバッターで、まだピアノも鳴らないでしょうに、大健闘です。
正統派の演奏、このように弾いてください、という冬のロシアでした。
森本さんも高校生です。情熱に従って、躊躇なく飛び込んでいく若さ、素晴らしいと思います。
高校生のお二人は、もう少しコンチェルトという共同作業を作りこめれば、無敵になりそうで、この先が楽しみですね。

音楽って、作曲家と、お客さんと、共演者と、自分、それと音楽を伝えてくれるこの地球のすべて、に捧げるものだと思う。
だから、実演に勝るものはないのです。コンサートに行きたくて仕方ありません。
あたらしい時代の演奏方式は、楽しみがむしろ増えたようで、これは歓迎しますけどね。

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